東栄町 その他
山が育む綺麗な水と満点の星空、東栄町の豊かな自然の中に、築150年の古民家で田舎の暮らしを体感できる「体験型ゲストハウスdanon」があります。
「奥三河で暮らすように遊ぶ」をコンセプトに、ただ泊まるだけの宿泊施設とは一味違う運営を行うdanonの魅力に迫るべく、今回は管理運営を行っている金城愛さんにお話を伺いました。
danonをはじめたきっかけは何ですか?
金城
「地域おこし協力隊」として東栄町で2年間活動している際に、東栄町は人口が少なく、人口の半分以上がお年寄りで、若い人が集まれる場所や訪れるきっかけが少ないと感じました。 また、都会から農業を体験しに来る若者を受け入れた農家さんから、「薪をくべたり畑を耕したりといった東栄町の普段の生活そのものが、外から来た人にとってはとても新鮮で喜んでくれた」「自分たちの日常を楽しんでくれる姿を見てうれしかった」という話を聞き、外の人と地域の人たちをつなげて東栄町の「暮らし」の魅力を知ってもらいたい、ファンを作るきっかけを作りたいと考えるようになりました。
そこで、日帰りで非日常的な観光気分を味わってもらうのではなく、なるべく長く過ごして地元の人たちとも交流しながら日常の暮らし自体を魅力として体感してもらうために、体験をしながら宿泊ができるゲストハウスを2015年に作りました。
ゲストハウスは外の人と地元の人の交流の場でもあるとのことですが、やはりゲストハウスをやっていく上で地元の人とのつながりは大切ですか?
金城
まずゲストハウスをやらせてもらっている時点で、地元の人たちからの恩恵をすごく受けていると感じています。私が協力隊の活動後も東栄町に残ってゲストハウスを始めようとしていたときに、私の希望を聞き、情報を集めてくれた役場の方や、古民家を使わせてくれた大家さん、頑張ってと声をかけてくれる地域の人がいなければ今はないと思います。このように東栄町には、新しいことをやる人を全力で応援してくれる土壌があると思います。
また、danonでのイベントの時には地元の人たちにも立ち寄ってもらって情報交換もしますし、それをきっかけとして地元の人に助けてもらうこともあります。例えば、ゲストさんが地元の名人と一緒にアユ釣りを体験するイベントでは、名人が釣れそうな場所から釣り方までいろいろ教えてくれます。
danonでは「奥三河の暮らし」に焦点を当てていますが、東栄町の「暮らし」の魅力はどんなところにあると思いますか?
金城
東栄町の人たちは、自分で「暮らし」を作っていると思います。田植えをしたり野菜を作ったり味噌を作ったりと、都会だったらお金で買うような必要な物を自分たちで作っています。このような手間暇をかけた四季に合わせた暮らしを、ゲストさんも体験して楽しんでくれています。
「とよはし天下一奉道会」※1で最優秀賞、その後の「人間力大賞」※2で特別賞を受賞されましたが、東栄町の方など周りの反応はどうでしたか?
金城
投票の段階から地元の人が声をかけて応援してくれたりしていましたし、予想以上に反響は大きかったです。私自身、賞を取りたいと思ってゲストハウスをやってきたわけではなくて、活動の結果として賞がとれたので、とても驚きました。新しいことをやるのを協力してくれる、地元の人たちの恩恵があってこそなので、地元の方をはじめ宿に関わったみんなで取った賞だと思っています。
※1とよはし天下一奉道会:公益社団法人豊橋青年会議所が主催で行われたプレゼン大会。対象は東三河の20歳から40歳の若者で、仕事や社会活動など情熱を奉げている取組をテーマに行われた。
※2人間力大賞:公益社団法人日本青年会議所が毎年実施している「青年版国民栄誉賞」。対象は20歳から40歳で、国内外問わず、科学技術・医療・福祉・文化芸術・国際交流・国際協力・環境・スポーツ・教育・まちづくり・災害復興等の活動を積極果敢に実践している若者。
これからdanonをどんな存在にしていきたいですか。また、新たに挑戦してみたいことはありますか。
金城
都会からの宿泊客の方は、東栄町まで時間とお金をかけてわざわざ来てくれています。そんな外の人たちが東栄町のことを知った時に、実際に行ってみようと思うきっかけとなるような「地域の入口としてのゲストハウス」になったらいいなと思います。
また、いきなり東栄町に移住・定住するというのはさすがにハードルが高くなってしまうので、移住・定住でもないけれど非日常的な観光でもないものとして、新たに数か月単位で過ごせるシェアハウスを作れたらなと考えています。シェアハウスはゲストハウスよりも「暮らし」寄りな場所になるので、農家さんのお手伝いをするだけでなく地区の集まりにも参加して地域のつながりやお祭りなども知ることができます。
田舎に住みたいと考える人がいても、いろんな場所がある中で自分にあった場所を選ぶというのは、その土地のことを知らなければとても難しいことです。だから、何か月か実際にシェアハウスで過ごしてみて東栄町について知って気に入ってもらえたら、移住するための空き家を一緒に探したりするというような、移住の前に様子を見つつ地域と関係を作る場所ができたらいいと思います。
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ゲストハウスを訪れたのは初めての経験でしたが、danonはなんだか実家に帰ってきたような懐かしさを感じさせる空間でした。東栄町の人と外の人の両方が楽しめる形でつながりを作るゲストハウスだから、地元の人たちも全力で応援してくれているのだと思いますし、周りの人たちへの感謝を忘れない金城さんのお人柄もあってこそなのだと思いました。
体験型ゲストハウスdanonホームページ
https://danon-toei.com/
フェイスブック
https://www.facebook.com/toei.yado.danon/
取材日:平成30年9月5日
取材者:名古屋大学 西村美祝