アーカイブArchive

アーカイブ

東三河のキラリ人

一覧に戻る

「きららの森」大きくなーれ 設楽測量設計事務所 加藤博俊さん

設楽町 技術部門

「きららの森」を伝える
北設楽郡設楽町の田峯地区にお住まいの加藤博俊さんを訪問しました。
経営される設楽測量設計事務所へ伺うと、奥さんとそこにお勤めの方々が爽やかに迎えてくれました。
加藤さんは測量設計士の顔以外にも、地域のボランティアガイドとして段戸裏谷原生林(きららの森)、津具地区の面ノ木園地などを案内したり、「奥三河の自然と歴史にふれあう会」の会員として自然保護活動に尽力されています。
その活動を通して、大林宣彦氏や北野大氏など著名な方々との出会いもありました。
設楽町の“かたりべ”としても有名なため、講演の依頼も多く、我々行政マンもこれまでに何回も加藤さんのご厚意に甘えてしまっています。
この日の取材もそんな加藤さんの優しさのお陰で実現できました。

ご自宅を新築されたそうですが…

一年程前に個人的な命名ですが、“地域おこしの家”を建てました。
地元の木材を利用し、地元の職人さんに建ててもらいました。
全て地元にこだわったわけです。
外材は合板一枚使っていません。
国産材は値段が高いと思われていますが、実はそんなことはないですよ。
もし、地元材で家を建てたい方がみえたら、我が家を見て参考にしていただきたいですね。
あと、昔住んでいた自宅はそのまま残してあります。
過疎化により空き屋は増えていますが、移住を望む人が借りられる家は意外と少ないのが実状ですので、そのような方に借りてもらえたらと思っています。

地域振興に対する熱い思いを、ビシビシと感じます…

ここに生まれて、地元の高校を卒業後は、名古屋で土木設計を学びました。
測量設計の仕事に携わり、名古屋で八年を過ごす間に、結婚しました。
ところが、中学時代から田舎が好きで、自然や歴史にとても興味があったので、Uターンして設計事務所を妻と二人で開きました。
五年位で事務所も軌道に乗り、同時に、地域へ貢献できることをしたいと考え始めたのもこの頃からです。

学校は残った、ただ今宅地分譲中!

実は、宅地事業にチャレンジしたことがあります。
きっかけは児童数の減少が原因による田峯小学校の廃校計画でした。
学校を残さにゃいかんと地区の有志が集い、平成十一年に宅地事業に取りかかりました。
その目的は若い夫婦の家庭を地区に呼び込み、子供たちの数を増やすこと。
平成十三年に借金をして山林を切り開き、住宅地を十七区画造成して販売までこぎつけることができました。
それから瞬く間に七件の入居が決まり、平成十四年の田峯小学校の入学式は全校生徒十名から十九名となりました。
現在は十四区画が売れ、十三件の入居までこぎつけています。
このエピソードは平成十四年に読売新聞の「幸せの新聞」コーナーで記事にしてもらいました。
事業のすべて用地交渉・測量・設計開発・立竹木の伐採・土砂の撤去などをPTA父兄で行ったから本当に一大事業でした。
予算が底をついて事業が止まった時もありました。
宣伝費もありませんから、ここの宅地は不動産会社では紹介されていません。
口コミだけですよ。(笑顔)

森づくりの中で、特にブナの木にこだわりがありますね…

皆さんに、「どうしてブナ?」とよく質問を受けます。
ブナが植林された森ではなく、原生林の象徴であること、地球温暖化により生息域が減少していることも勿論理由です。
ただ、ブナには他に二つの特徴があります。
一つ目はブナの森は“水源の森”ということです。
その根は漏斗状に伸びるため、保水性が高くなり、治水効果として災害に強い森を作ります。
また、落ち葉は硬くて腐りにくいため、しっかりした層を形成して森の腐葉土に適しています。
二つ目は生物多様性に優れます。
ブナの葉や実を食べる動物・昆虫の種類は多くて、様々な生き物が依存できます。
だから、ブナの森は雑木林にピッタリですよ。
ブナの苗木作りを平成十一年から取り組んでいます。
実を集めて蒔きましたが、初めは動物や昆虫の食害、あるいはブナの植生に適した“地ごしらえ”をしなければ育たない等多くの難題があり、五年目でやっと二十本を育てられました。
植林のための山を買い、自家用車購入を諦め、この苗木を田峯小学校の卒業生にプレゼントしました。
子供たちの手により植樹した苗木は、その子たちの所有物として登録したので、本人以外が勝手に木を切ることはできません。
植えられた木は子供たちと共に育つことでしょう。
この記憶を持つ子供たちの中に自然や地域に興味を抱く人が現れるかもしれないのが楽しみですね。

地域のことを知りたい欲求

二十年間「奥三河の自然と歴史にふれあう会」の活動で希少動植物について調査してきました。しかし、希少な自然を守るため公表できませんでした。
今年から年四回機関紙を発行して、その内容を発表する予定です。
それから、地元のことをもっと知り尽くしたいという思いが強いですね。
自分の足元を見つめ直してみたい。
自分の周りに知らないことがたくさんありますから。
ひとつのことをやり始めると最低十年間が必要です。
だから歳月を経ている内にドンドンやりたいことが増えていきます。(笑)

出典

「キラッと奥三河 ―人・物・文化・企業―」
No.1 「きららの森」大きくなーれ 加藤博俊さん
訪問日 平成22年1月5日
訪問者 新城設楽山村振興事務所 山村振興課 宮内一郎

※記載内容は取材当時のものです。

PAGETOP